ピアノを習い始める年齢と、辞める年齢について
ピアノを習い始める年齢というのは、一般的に幼稚園~小学校低学年という方が多いように感じます。
実際、私がピアノを始めたのは幼稚園年長の頃でした。
娘にピアノを教え始めたのは幼稚園に入園した頃からでした。
ピアノを始める理由というのは、様々で、「ピアノが弾けたら楽しそうだから」「大人になった時に、好きな曲を趣味として弾いて楽しめるようになって欲しいから」「情操教育に良さそうだから」「音楽が好きそうだから」などが一般的だと思います。
しかしながら、年齢を重ねていくうちに、勉強における比重が大きくなり、習い事を減らしていかなければならない問題に直面し、ピアノを削るという選択を視野に入れるご家庭も少なくありません。
私の経験ですが、中学生の段階では、まだ音大などを目指していた訳ではありませんが、ピアノが好きでしたので、中学3年生になって、高校受験の勉強をしながらもレッスンに通っていました。けれども、一緒に習っていたお友達はどんどん辞めていきましたし、高校生になった時には「まだ、ピアノ習ってるの?」と不思議そうな顔をされたのが忘れられません。
小学校高学年にもなってくると、塾に通うという選択をされる方も増えて、ピアノを練習する時間が無くなってきたので、辞める、という選択肢が出てくる方もいらっしゃいます。
実際、我が家の娘も塾に通っていますし、習い事をどうするか悩みました。
我が家の場合~娘が塾に通っている理由~
娘は小学3年生の2月から、塾に通っています。
と言うと、教育熱心なんだなぁ、と思われるかもしれませんね。
けれども、我が家は別に教育熱心な訳ではありません。
通っていた幼稚園は遊び中心で、勉強は一切なし。放課後の園内習い事もありません。文字を教えてもらうことも、計算の練習をすることもありませんでした。
夫も私も、小さいうちは遊ぶことが大切だと考えていましたし、遊びの中の学びがどれほど大切かを知っていたからです。
ただ、小学生になってからは通信教育で学校の勉強の補充をさせて、必要最低限の勉強はさせていました。
また、漢字に興味を持っていたので、漢字検定に挑戦し続け、4年生の時に3級(中学卒業程度)に合格しました。
そんな中、新聞の折り込みチラシで見つけた塾の無料の公開テストを受けてみたいと言い出したのです。
難しい勉強をさせていた訳ではなく、基本的な学習しかしていないので、きっとテストが難しくてショックを受けるのでは無いかと思っていたのですが、テストを楽しんで帰ってきました。
「学校では、“抜き出しましょう”とか、決められた答えを書かなくちゃいけないのに、“あなたなら、どう考えますか?”って問題があったんだよ!自分の考えをテストに書いても良いんだよ!」と目を輝かせて話したのです。
結果は上位クラスで入塾できる、という連絡を頂ける点数でした。
何度も繰り返しになりますが、我が家は教育熱心ではありません。
夫は中学受験をして、いわゆる難関と言われる学校に行っていましたが、「勉強(中学受験)は本人にヤル気が無いと、苦行だ」という考えでしたし、私は高校まで地元の公立でしたので、我が家では、小学生のうちから塾に通って難しい勉強をさせる必要性も感じていませんでした。
けれども、娘はどうしても塾に通って、あのテストの問題を解くような勉強をしたい、と言い出しました。数ヵ月後、またテストを受けたいというので、受けたのですが、同じような結果、同じような考えに変わりが無いらしいので、根負けして塾に通わせることにしました。
(中学受験をするかどうか、というより、単純にこの塾に通って勉強したい、という理由でしたので、今後、どうなっていくのかは分かりません。娘の人生なので、本人の気持ちを大切にしながら、できる限りのサポートをしたいというのが現状です。・・・受験塾なので、流れに身を任せているような状態にはなっているのですが。受験塾ってどんな感じ?など、気になる方はレッスンの時にでも、お声掛けください。)
塾に通い始めて習い事を整理する気持ちが分かった
4年生の頃は3歳から本人の強い希望で習い始めたクラシックバレエ(週2回)と、学校のプールの時間に泳げなくて悲しい思いをしたので、泳げるようになりたい、と言って通い始めた水泳(週1回)、私が隙間時間で教えるピアノ、を続けながら週2回、電車に乗って塾に通っていました。
5年生(4年生の2月)からは塾が週3回+週末のテスト、というスケジュールと授業の難しさから、「勉強を頑張りたいから、バレエは一旦辞める」と言い出したのです。
折角、やっと、トゥシューズが履けるようになって、これから、もっとバレエが楽しくなるであろう時にです。
バレエは週に1回に減らしても、続けたらどうかと、何度も話し合ったのですが、娘の意思は固く、バレエを辞めることにしました。水泳も4泳法が泳げるようになったので、辞めました。
確かに、塾の勉強はどんどん難しくなっていき、こなさなくてはならない課題が増えている印象でした。世間の方が塾に通うようになると、習い事を辞めていくのは、こういうことか、と納得したのです。
けれども、ピアノは週末だけでも、練習して、細々と続けさせていました。
平日に練習することは不可能でしたので、日曜や長期休暇の時に多めに時間をとって練習させました。
なぜ、そこまでして、ピアノを弾かせているのか、と思われるかもしれませんね。
それは、ピアノが脳に与える影響が大きいこと、ピアノを弾くことで勉強にも良い影響があることを知っているからです。
もちろん、全く練習がはかどらない時期もありましたが、発表会前は勉強時間を少し減らしてでもピアノの練習をさせました。
ウソのように思われるかもしれませんが、そういう時の模擬試験の結果はかなり満足のいく点数が出ていました。(発表会後の模擬試験の点数と比較した物を娘の名誉のため、お見せできないのが残念です)
様々な角度から物事を捉えられるようになって欲しいから、ピアノ!!
先日、娘が返された学校のテストの回答が、あまりにも杓子定規な採点で、夫も私も娘の回答が減点されることが納得いかないということがありました。
そういう側面があることを、学校で働いていた経験から承知しているのですが、何となく悶々とした、後味の悪い気持ちが残りました。
子どもには、一つの角度からしか物事を見られないような人間ではなく、色々な角度から物事を見て考えられるようになって欲しい、と思っているからです。
違った角度から物事を見て、結果として正解を導き出したのなら、「そういう見方、考え方もあるよね」と認めてあげたいし、そういう面を伸ばしていきたい。
やっぱりピアノは続けさせなくてはならない、と感じた出来事でした。
ピアノには、学校の勉強だけでは補えない能力を伸ばす効果があるからです。
ピアノには脳に良い影響を与える、ということは一般的に知られていると思いますが、HQ「人間性知能(社会の中で生きていくための能力)」を高める効果も期待できるという研究結果が発表されています。
参考文献はコチラ↓
HQが発達すると、どんな良いことがあるのかというと、以下の通りです。
・目的を持って、未来志向で計画的に物事を進められる。
・学力と学習意欲が高くなる。
・問題解決能力が高くなる。
・個性的で独創的になる。
・理性的で、協調的になる。
・優しく思いやりが持てるようになる。
・社会的に成功しやすくなる。
ピアノを2年以上習い続けている、楽しんで取り組んでいる、という条件は必要になりますが、ピアノを習わせている保護者の方の中には、お子さんの、これらの能力が確かに高くなってきているな、と思われることがあるのでは無いでしょうか。
では、なせ、今、このような能力が必要だということになるのか。
計算が速くできたり、沢山の知識を持っていたりするということは、確かに大切です。
しかし、基本的な知識を持っていれば、それをコンピューターやAIを使って様々な問題が解決できる時代になっています。
今、人間に求められることとは、杓子定規なことを詰め込むのではなく、AIができないことをできる能力を育てること。
創造力を持つこと、企画力、決断力、相手の気持ちを汲んだ言動ができることなのです。
そういう意味からも、芸術の必要性は様々な場面で見直されてきていますし、芸大や美大などの卒業生が企業から注目されているのも納得できます。
人生を豊かにする音楽を通して、人間性知能も伸ばして欲しい。
勉強だけではなく、やはりピアノも続けさせる、という結論になった理由です。
実際、難関と言われる中学などでは、音楽の授業は「副教科」という扱いではなく、国語や数学と同等に扱われていることが多いです。音楽の授業では1人に1台電子ピアノが用意されていて、ピアノを演奏させる、ということも珍しくないようです。
私が目指すピアノレッスン
先日の、とある生徒さんのレッスンでの出来事です。
「優しい花」という曲のレッスンでした。
一通り弾いた後、生徒さんに「優しい花、ってどんな花だろうか?色や香り、大きさなどを考えてみよう」と提案しました。
「砂漠に咲く、黒くて大きくて、臭い花」との答えが返ってきました。
一般的には、「優しい花、なんだから、ちょっと違うんじゃない?」と思われるかもしれませんね。けれども、私はとてもユニークで面白い考えだと思いました。
「で、どんな所が優しいの?」と質問しますと、「害虫を食べる(食虫植物)から、環境に優しい花!」とのことだったのです。
「いいね!いいね!!よし、じゃぁ、その花のことを考えながら弾いてみよう。ただ、ここは2人が(人間と花?花を見ている誰か?)、会話をしているように弾いてね」と、演奏上の注意点などはお伝えしますが、自由に自分の世界を表現するための考えを持っていることがとても素敵だと思いましたし、大切にしたい能力です。
とても面白かったので、レッスンが終わってから保護者の方にこの内容をLINEでご連絡しました。
私は学校の勉強だけでは学びきれない能力を、ピアノを楽しみ、上達する副産物として伸ばして頂きたいと考えています。
それは、ただ、言われた通りにピアノの音を出すことではありません。
とは申しましても、楽譜に書かれていることは、絶対に守らなくてはなりません。
強さの指定、テンポの指定は演奏する上で大切ですし、音を好き勝手に変えて弾く、というのはクラシックではあり得ません。演奏するためのテクニックには守らなければならない基本の型があります。
ただ、「強く」と書かれていても、どんな強さなのか、怒りの強さなのか、楽しい強さなのか、など、自分で考えて弾くと、誰でも同じ演奏にはなりません。
誰かのマネをしても、その音楽は味気の無いものになります。また、ただ書かれたことだけにしか意識がいかないと、「教科書通りで、つまらない演奏」(←大学生の頃、ため息まじりに教授から言われた覚えが・・・)になってしまいます。
レッスンのお問合せを頂いた時に、びっくりするようなことをおっしゃった保護者の方がいらっしゃいました。
当教室から、コンクールで入賞者が出ている、と知ってのお問合せでした。
「ピアノコンクールで、全然結果が出ないから、提供されている模範演奏を子どもに完全コピーさせて挑んだのに、入賞しないんです!」
聴く人が聞けば、分かるものなのではないでしょうか。
演奏にその人の意思が入っていないこと、テクニックが上辺だけであること。最大の問題点は演奏者本人が楽しんでいない、主体的ではないということが。
ピアノは勉強の邪魔になる、と思われる方も多いかもしれませんが、息抜きになるのであれば、負担にならないのであれば、細々とでも続けることをオススメしています。
きっと、将来「辞めなくて良かった」と思われるのではないかと信じているからです。
楽譜から様々な情報を読み取り、自分なりに解釈して、演奏する。うまく弾けないところは、なぜ出来ないのか考えて、何度も繰り返し反復練習と修正を繰り返して、仕上げていく。発表会などで、人前で演奏して聞いていただく。誰かに伝わるようにする。ステージに立つ時にマナーを練習する。なぜ、そうするのか、考える。
上達する。
難しい曲が弾けるようになる。
も、大切だし、目標にすることは重要ですが、その過程で、素晴らしい宝物をたくさん見つけて、自分のものにしていって欲しいな、といつも考えています。