子どものピアノ練習で大切にしたい5つのこと

1. ご褒美作戦について

「あまり良くないかな?」と思いながらも、誰でも1度は経験したことがあるのが“ご褒美作戦”ではないでしょうか?

 

ささやかなものなら、「練習を30分したらゲームしても良いよ」や「おやつ食べても良いよ」などがありますね。

少し豪華なものになると「教本1冊合格して終わったら、好きなお菓子を買ってあげる」など。

さらに、目標がコンクールやグレード試験になってくると「合格したらオモチャを買ってあげる」などのように、

目標が高くなればなるほど、ご褒美も豪華になって、子どものやる気を出させようと奮闘された経験がある方も多いと思います。

 

私も経験あります・・・

 

これはピアノに限らず、勉強でも当てはまります。

毎回毎回、豪華なご褒美を準備するとなると、経済的にも負担になりますし、

ご褒美が無いと、頑張れない子になってしまわないか心配になりますよね。

 

「練習したらゲームしても良い」

「練習したら、おやつを食べても良い」

 

これくらいは生活のリズムを作るのに効果的ですので、問題は有りません。

けれども、「○○を買ってあげる」などになってくると、学年が上がってくれば高価な物を要求され続ける恐れがあります。

教本が修了したこと、コンクールやグレードに合格したこと、そのこと自体がご褒美として嬉しい体験になるようにしていければ、

ご褒美で釣らなくても頑張れるようになります。

そのためには、まず保護者の方、ご家族の方がたくさん褒めて、そこに至るまでの努力を認めてあげる言葉をかけてあげて欲しいと思います。

 

もちろん、ご褒美が悪い訳ではありませんので、ご家族で相談しながら、努力をねぎらってあげるような

“お楽しみ”があると良いかもしれませんね。

 

「コンクールが終わったら、結果がどうあれ、今日まで頑張ったから、ケーキ買って帰って一緒に食べよう」

などは、とても良いと思います。

本人がご褒美を欲しがっていない、モチベーションは自分で保っている、というお子さんに対してのご褒美は逆効果になりますので、

ご注意ください。

例えば、スランプでもなく、練習を進んで毎日やり、教本修了を目指して頑張っているのに

「教本修了したら、好きなお菓子を買ってあげる」などと、親の方から言ってしまうと、

折角のやる気がしぼんでしまうので気をつけてください。

 

ご褒美作戦の時に、間違えても絶対にやってはいけないことがあります。

それは、不意打ちの罰です。

「ピアノの練習しないんだったら、明日の遊園地は行くのをやめるからね」

「おやつ抜きにするからね」などのように、全く関係のない罰を与えることです。

 

焦って頑張るのでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、やる気をなくさせるだけです。

2. 競争は避ける?

コンクールや発表会の曲などで、子どもの競争心をあおるのは、良くないことでしょうか?

「人と比べることは良くない」「自分は自分らしく頑張ればよい」確かにその通りです。

けれども、適度な競争心は子どもの成長には欠かせません。

 

レベルが高い人を見て「すごい」と感じる心は大人も子どもも同じです。

全く届きそうもない天才的な能力を持っている人、人並み以上の努力をして手に入れた能力に対しては

「敵わないな」と諦めに似た気持ちにもなりますが、

コンクールや発表会で「あの人すごく上手!」「あんな素敵な曲を弾けるなんてすごい!」と思っていたら、チャンスです。

 

「私もあんな曲が弾けるようになりたい!」というモチベーションから練習に励んだ、

とても弾けそうにない曲を少しずつ練習して弾けるようになった、というのは当教室でもよく聞く嬉しい効果だからです。

 

“自分も諦めずに挑戦してみよう”そう思えるような競争心は大切にして頂きたいと思います。

 

けれども、間違えても他人の足を引っ張るような競争心にならないように気をつけてください。

極端な話、ひと昔前のドラマや漫画でありそうな「ライバルが楽屋に置いていたドレスをビリビリにする」「ライバルの靴に画鋲を入れる」は現実的では無いかもしれませんが、「悪口を言う」などです。

 

「先生に“ひいき”されているから、特別レッスンしてもらってるんじゃない?」

「コンクールで入賞している割に、あんまり上手じゃないよね」

など、人を傷つけるような悪口を言うのは、親子でご注意ください。

 

もし、お子さんが競争に負けて落ち込んでしまったり、他人の足を引っ張るような言動をしていると感じたりしたら、

保護者の方が切り替えてあげてください。

 

これも、勉強と同じです。

 

進学塾ではテストの度に成績が貼り出され、成績順に教室の席順が決まるのも珍しくありません。

 

その度に一喜一憂していたのでは、疲れてしまいます。

結果を楽しめる余裕を持ちながら、前向きな競争心を持って、レベルアップできるようにしていきましょう。

3. 「あきらめない」を覚える

ピアノはすぐに上手に弾けるようにはなりません。

有名なピアノ曲を弾けるようになるまで、一般的には数年かかります。

 

また、新しい曲に取り組む時、音を読み、リズムを理解し、音楽記号を意識しながら弾けるようにしようと思うと、1週間以上かかることも珍しくありません。

 

そうすると、「難しいから、やりたくない」と、練習を全くしなくなるケースがあります。

それでは、粘り強く物事に取り組み、「あきらめない」を覚えるチャンスを失うことになりかねません。

そんな時は、お子さんが上手に弾ける曲を保護者の方がリクエストして、お子さんに弾いてもらい、

大袈裟に喜んであげると、モチベーションアップにつながります。また、1回に練習する量を減らすというのも効果的です。

 

たとえば、4段の曲を練習する場合、「今日は1段目だけ弾けるようにする、明日は2段目を練習する」

などのように、区切って練習すると、気持ちが楽になり、取り組んでみようと思えることが多いからです。

 

 

ピアノが習い事の一つであり、ゆっくり上達すれば良い、という方針の方であっても、あきらめずに取り組む姿勢は大切にしてください。あきらめずに取り組めば、弾けるようになる、という成功体験を通して、自己肯定感が高くなり、勉強やスポーツなど、他のことにも積極的に取り組めるようになり、苦手なことや嫌いなことへの取り組みにも良い影響があると言えます。

4. 反復練習を身につける

ピアノは反復練習が必須です。

何度も何度も同じフレーズを練習します。

音やリズムを間違えずに弾けるまで、反復練習をします。

余裕が出てきたら、強弱も正しく意識できているか、確認しながら反復練習をします。

発表会やコンクール前ともなると、ミスなく弾けるようになるまで、何度も繰り返し練習します。

1分くらいの短い曲を弾く時でも、何十回、何百回と反復練習をします。

反復練習をする習慣がついてくると、上達が早くなります。

さらに、反復練習の過程で自分に厳しく練習できると、さらにレベルアップすることができます。

 

できれば、10歳くらいまでに、反復練習が“当たり前なもの”になるようにするのが理想です。

なぜなら、10歳の壁」が立ちはだかるからです。

10歳の壁には様々なものがありますが、その中のひとつに「反復練習の壁」があります。

小学校高学年以降になると、学校や塾の勉強もだんだん難しくなっていきます。

計算や漢字の練習は、何度も反復練習をして、基礎学力を固めるのに大切になってきます。

けれども、幼児期~低学年の時期に反復練習をする習慣が身についていないと、

高学年になってからだと反復練習を習慣化することは難しく、さらに、高学年になってから反復練習をしても、低学年の時と同じだけの吸収力は期待できない、と言われています。

目安時間は30分間の反復練習を頑張ることができるかどうかです。

多くのピアノ教室は1回のレッスンが30分です。当教室も30分レッスンが基本レッスン時間です。

 

 

つまり、30分のレッスンの中で先生と一緒に弾けないところを繰り返し練習して、練習の仕方を覚えて帰り、

自宅でも次のレッスンまでに弾けるように反復練習をすることが、学習面においても、学力向上のために、反復練習が習慣化でき、

とても役立つ効果があると言えます。

5. 目の記憶力を活かす

ピアノを習い始めの頃は、簡単な曲を練習することが多く、楽譜を見なくても耳で覚えて弾けることがあります。

また、先生や保護者の方がお手本を弾いて見せれば、マネをして弾けるようになります。

幼児期は特に、耳の発達が顕著ですので、聞く力を伸ばすのはとても大切なことです。

しかし、耳で覚えたり、弾いているところを見て覚えたりして練習していたのでは、いつまでたっても自力で楽譜を読んでピアノを演奏できるようにはなりません。

ぜひ、小さいうちこそ、楽譜を読む力を育てて頂きたいと思います。

 

楽譜を読んで弾けるようにしようと思うと、弾ける楽しみが後回しになるから、手っ取り早く弾けるようにお手本を弾いて、マネをさせた方が良い、と考えていらっしゃる方もおられるかもしれません。

もちろん、お楽しみとして、そのような練習があっても良いと思いますが、自分で楽譜を読む力は幼少期から鍛える必要があります。

なぜなら、小さいうち(12歳~15歳くらいまで)は大人よりも目の記憶力に優れているからです。

どういうことかというと、映像や画像で覚えることが、大人よりも子どもの方が得意なのです。

理屈ではなく、覚えることができるので、音符も画像として「この場所に玉があればドの音だな」と覚えることが容易なのです。

ですから、小さいうちこそ、楽譜をしっかり見て、音符を読む練習を大切にしていただきたいと思います。

 

もちろん、大人になってから覚えることができない、という訳ではありません。中学生以降になると、体系的に覚えるようになりますので、何故そう読むのか、ということが納得できれば、スムーズに読むことができるようになります。

まとめ

 

「ピアノを弾くと頭が良くなる」「東大生の2人に1人はピアノを習っていた」など、ピアノは脳に良い影響を与えることは有名です。

もちろん、それだけではなく、ピアノを弾いて楽しむことができる能力というのは人生において宝物になります。

お子さんが人生においてピアノを楽しみ、ピアノを通して様々な能力を高めるためにも、物質的なご褒美だけでなく、精神的なご褒美を糧に上達できると良いですね。

また、他の人を「すごい!」「あんな風に弾けるようになりたい」という気持ちを大切にしてモチベーションアップにつなげるのはとても良いことです。しかし、時には難しくてなかなか弾けるようにならない曲との出会いもあるかもしれません。そんな時は反復練習を習慣化し、丁寧に楽譜を読む力を磨いてください。その能力は学習面での効果はもちろん、大人になってからも困難を乗り越えていく糧になると言えます。