生活の中で”速さ”を求められることが多いと感じる方も多いのではないでしょうか。
例えば、ファストフード。
注文すれば、すぐに商品を受け取って食べることができます。
例えば、日常生活。
「速くしなさい!」とお子さんに、つい言ってしまいませんか?
(私は、言わないようにしようと思っても、つい、言ってしまいます。。。)
メールやSNSの返信が遅いと不安になったり、イライラしたりしませんか?
このように、日常生活の中で”速さ””スピード感”を求められることが多い昨今ですが、
ピアノは時代が進んでも、一朝一夕に弾けるようにはなりません。
音楽を楽しむために、人生をより豊かにするために、何年も練習を重ねて上達できるようにします。
時には壁にぶち当たったり、限界を感じながらも続けることで、
ピアノの練習を通して、音楽を楽しむことができるだけでなく、素晴らしい力がつくことをご紹介していきます。
試行錯誤する練習
突然ですが、お子様をお持ちの方に質問です。
最近、試行錯誤するような経験をお子様に与えましたか?
具体的に申し上げますと、失敗するかもしれないけれど、自分で考えて工夫して実行させるということです。
「宿題はやったの?」
「時間割はそろえ終わった?」
「明日はテストがあるんでしょ?勉強しておいた方が良いんじゃないの?」
お子様が自分で考えて行動できるようなことでも、忘れ物をさせてはいけない、失敗させてはかわいそう、という思いから、過剰に指示を出してしまいがちです。
子どものことが心配だから、つい言ってしまって、口出しし過ぎたかな、とフッと思うことが…
はい。私のことです。
けれども、自分で試行錯誤して、成功や失敗の体験をしておかないと、失敗を必要以上に恐れてしまう感受性が形成されるだけでなく、自分で考えて判断する能力を養うことができなくなってしまうのではないでしょうか。
ピアノのレッスンに通っているお子様の保護者の方はお気づきかもしれませんが、
ピアノの練習をするということは、強弱記号が書かれていないところは、どのように弾けば良いのかを自分で考えて試してみなくてはいけません。
どういう練習をすれば上手になるのか、先生にアドバイスをもらいながら、自分で練習するしかないのです。
時には、発表会やコンクールで失敗してしまうこともあるかもしれません。
合格がもらえると思ってレッスンに行ったのに、間違えていて合格できなかった、ということも多々あると思います。
けれども、これらの経験は、長い人生の中で、工夫して成功に向かっていくという力を培うことになると確信しています。
ですから、生徒さんには、練習方法や弾き方はアドバイスしますが、頑張る力を信じて待つようにしています。
レッスン中に質問しても、黙っているお子さんもいらっしゃいますが、それは、黙っていれば、いずれ先生が答えを教えてくれるだろう、という今までの経験からきた行動だと思います。
ですから、黙っている生徒さんには「間違えていても良いから、思ったことを言ってみて」「調べてきて、次のレッスンの時に教えてね」と言っています。絶対に答えをすぐには教えません!
頑張りが報われない経験も時には必要
頑張れば、絶対にうまくいく!
そんなことは無いのが現実です。
一生懸命勉強しても、テストで100点が取れないこともあるでしょう。
人の何倍も練習したのに、部活動でレギュラーになれないこともあるでしょう。
きっちり仕事をしているのに、上司に評価してもらえない、理不尽だ、と感じることもあるでしょう。
そんな時、どう捉えれば良いのでしょうか。
「どうせ勉強しても、良い点数が取れないから、勉強することをやめる」
「頑張って練習しても、無駄だと分かったから、適当に手を抜いて練習する」
「バカバカしいから、上司にキレて、仕事を辞める」
一般的に考えて、こんな捉え方は良くありませんよね。
もちろん、イジメや精神的にどうしても耐えられないことがあった時は、逃げることも大切ですが、
そうでない場合は、忍耐力が求められるのではないでしょうか。
2016年に山形県の放課後児童クラブなどの関係者に榎本博明氏が実施した調査によると、
「忍耐力のない子が増えていると思う」という回答が86%
「傷つきやすい子が増えていると思う」という回答が75%
という結果になっています。
『伸びる子どもは〇〇がすごい 著者:榎本博明』という本によれば、これは非認知能力が身につけないまま成長している結果だとされています。
【非認知能力とは】
・意欲・意志力
・何かに夢中になる力
・自分のことを好きだと思える力
・自分の気持ちを前向きにコントロールする力
など・・・
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ピアノは自分の意志で練習するしかありません。
代わりに親が練習することはできないのです(練習を促すことはできますが)。
難しい曲が弾けるようになれば、やれば出来る!自分は凄い!と思い、自分のことを認めていけるようになります。
以前のコラムで詳しく書いていますので、下記を参考にしてみてください。
練習したけど、合格がもらえなかった。。。次のレッスンに向けて、また、頑張ろう。
コンクールで入賞できなかった・・・頑張ったけど、駄目な時もある。他の子はもっと練習していたのかもしれないし、審査員の好みの演奏では無かったのかもしれない。また、今度入賞できると良いな。
小さなお子様の心が、ピアノを通して強くたくましく育ってくれたら嬉しいな、と思いながらレッスンをしています。
すぐに諦めない力をつけるために
自分の子どもには、傷ついて欲しくない。悲しい思いをして欲しくない。
誰もが思うことだと思います。
もちろん、精神的に病んでしまうようなショックや、心の傷として一生消えないような傷は残すようなことはあってはなりません。
けれども、少しくらいの擦り傷を作って、怪我に慣れることも必要ではないでしょうか。
乳幼児の頃は、少し転んだだけでも泣いていたのに、小学生になったら、少しくらい血が出ても泣かなくなるのと同じだと思っています。
小さい時に、たくさん小さな怪我をしたり、痛い思いをしたりしたからこそ、成長した時に、「これくらいの怪我は数日で治るから大丈夫」と思えるのではないでしょうか。
小さな失敗や小さな挫折をたまに経験することで、少しの失敗ではへこたれない心を育てることが成長過程では必要です。
そのために、ピアノの発表会やコンクールには是非、参加していただきたいと考えています。
発表会で失敗しても、誰も笑ったり、バカにしたりしません。
会場のお客様は「がんばれ!」と温かく見守ってくれますよ。
コンクールで失敗しても、半分以上の人が落選するので、一人だけではありませんよ。
ピアノの上達と一緒に、心の少し成長させる機会を設けていますので、ぜひ参加して頂きたいです。