コンクールは何のためにあるのか?
ピアノのコンクールというと、ピアニストを目指している人たちが挑戦するものだと思われている方も多いかもしれませんね。
教養や趣味として、ピアノのレッスンに通っていらっしゃる方から見ると”別世界のもの”というイメージが強い、ピアノコンクールについて、考えていきたいと思います。
現在、日本国内で行われているピアノコンクールは200以上と言われています。
それらのコンクールは、理念、内容、レベルも様々です。
ですから、学年別、課題曲別になっているピアノコンクールは、ピアノの「定期試験」という捉え方もできます。
なぜなら、力試しができて、同じ年ごろの他の方の演奏を聞くことができる機会となり、良い刺激になるからです。
発表会とはまた違った視点でコンクールに参加する曲を深く掘り下げて練習しますし、
コンクールの参加を通して、底力をつけることができるといえます。
また、コンクールでは、審査員の方から個別に感想やアドバイスを頂くことができますので、
”外部評価を先生と生徒で受けに行く”ということにもなります。
・理念、内容、レベルは様々
・ピアノの「定期試験」という考え方もできる。
・力試しができて、同じ年ごろの子の演奏を聞くことができる機会となる。
・コンクールの参加を通して、底力をつけることができる。
・外部評価を先生と生徒で受けに行く。
コンクールは生きる力を育む
コンクールは、結果の良し悪しにかかわらず、得ることのできる喜びがあります。
コンクールに出場することで、本番力がつくので、入試や面接などではあまり緊張しなくなる人が多いのがその代表です。
先日も、小学校入試面接の直前に、たまたま初めてピアノコンクールに出場された方は、コンクールではとても緊張していたけれど、入試では殆ど緊張されなかったとか。
保護者の方は、ピアノのコンクールでの精神的な成長を感じたので、続けていきたいとおっしゃっていました。
また、普段のレッスンと違い、ただ弾けるだけでなく、何か月も同じ曲を練習し続けることで、完成度を高くし、極める力を身に着けることができます。
【コンクールで得られるもの】
①モチベーション ②継続する力(持久力、忍耐力、集中力) ③磨き、極める ④刺激
⑤本番力 ⑥自信(やり遂げた力) ⑦謙虚さ ⑧挫けない心 ⑨第三者からのアドバイス
コンクールは3回以上続けてみる
初めてのコンクールはお試し!
初めから、良い結果を得ることを目標をする必要はありません。
もちろん、入賞すれば嬉しいです。
けれども、コンクールの雰囲気、コンクールへの準備など、
お試し参加をするつもりで挑むと少し気分も楽になるのではないでしょうか。
2回目のコンクール参加は定着を目指す!
1年前のコンクールで学んだことをいかせるようにして、次につなげていくことが大切です。
具体的には、練習スケジュールや、曲選びが挙げられます。
3回目のコンクール参加はチャレンジ!
コンクールにも慣れてくる頃なので、目標を明確にして挑戦していくことで力がつきます。
例えば、「予選は絶対に通過する」など、少し頑張れば手が届きそうな目標を作っておくことがオススメです。
コンクールにどう臨むか
「入賞」以外の目標を設定してみる
小さいお子さんの場合、普段のレッスンとは違う、緊張感が漂った独特の雰囲気の中、
舞台に出て演奏することができれば、OKだと考えるようにしてみましょう。
間違えずに弾くことができるようにする、や、楽しんで弾けたら良いことにする、など、
個々に目標を設定することも大切です。
結果に一喜一憂しすぎない
落ち込み過ぎず、喜び過ぎないようにしましょう。
なぜなら、結果は水物だからです。
審査結果は、その日のそのホールと、その順番で、そこにいた審査員が下した結果でしかありません。
曲が変わり、ホールやメンバーが変われば結果が変わる可能性は大いにあるからです。
悔しさをバネにできる子が成長できる
参加したコンクールの大会で通過できなかったときこそ、得られることがあります。
何が自分には足りなかったのかを冷静に受け止めて、そこを改善していくことで、実力がつくようになるからです。
継続して参加することで成長できる
チャレンジした数だけ確実に力になっていきます。
緊張感に慣れ、練習スケジュールが見えてくるようになり、どれくらい完成度を高くしてコンクールに挑まなければならないか、ということが分かってくることで、確実に成長することができるようになります。
審査員は何をどんなところを聴いているのか
何に注目して聴いているかは、審査員によって異なりますが、主に聴いているのは次のようなことです。
・音の響きの美しさ
・拍子とリズム
・音楽の構成力
・メロディと伴奏のバランス
・自発的に音楽を楽しんでいるか
・ペダリング
・音の正確さと明確さ
・デュナーミク(強弱、音楽の表情)
・テンポの選び方
・暗譜の精度
・ステージマナー
など
練習で気を付けるのはこんなこと
・音に表情をつける
・曲のイメージにあう音で演奏する
・手首は柔らかく
・上がっていく音型は楽しさや嬉しさを表現しているので、だんだん強くする。
・下がっていく音型は悲しみや寂しさを表現しているので、だんだん弱くする。
・長調と短調で音色を変える
・左で音楽を作って、立体的な曲に仕上げる(左も丁寧に弾けるようにする)
・和声感とフレーズ感を大切にする
審査結果は玉ねぎ型
トップの人は少数ですが、通過ライン周辺に多くの人が集中する傾向があります。
例えば、下の図のような審査結果が出たとします。
|
A審査員 |
B審査員 |
C審査員 |
平均点 |
Dさん |
8.1 |
8.0 |
8.4 |
8.166 |
E さん |
8.2 |
8.1 |
8.1 |
8.133 |
A審査員とB審査員はDさんよりも、Eさんの点数を高くつけているにも関わらず、
C審査員がDさんの点数を高めにつけたために、平均点はDさんの方が高くなってしまいました。
すると、順位はDさんの方が上位になる、という現象が起こることがあります。
まとめ
コンクールというと、賞を取ることや、予選を通過して次のステージに立つことを目標にする場合が多いと思います。
けれども、それだけを目標にしてしまうと、入賞しなかった時に落ち込んでしまい、立ち直るのに時間がかかることになってしまいます。
実際、コンクール会場で入賞者発表の後に、未就園児のように泣き叫んでいる小学生がいました。
更衣室で「次の大会(全国大会、ファイナル大会などの次のステージ)には出られないんだよね・・・」と目に涙をいっぱいためて、保護者の方につぶやいているお子さんもいました。
床に座り込んで呆然としているお子さんもいました。
全く他人の私でも、その姿を見ると、同じように子どもを持つ親、また、ピアノ講師という立場から、とても辛いな、と感じました。
コンクールに出場するのであれば、結果がどうあれ、
落ち込みすぎたり、喜び過ぎたりしないことを肝に銘じておくことが大切です。
その大会で良い結果が出せても、他のもっとレベルの高いコンクールでは、入賞することができない可能性があったり、
同じ大会でも、地域や審査員、出場メンバーが違えば、入賞していた可能性があったりするからです。
出場するにあたり、一番大切なのは毎日練習することや、本番で練習通りの演奏をすること、楽しむことです。
もっと言えば、コンクールという独特の会場の雰囲気の中、一人で舞台に出て、最後まで弾き切ることができれば、
結果がどうであれ、親子で頑張りを喜ぶことができれば良いのではないでしょうか。
大きな舞台に一人で出ていくというのは、大人でも緊張します。
コンクールや発表会など、大きなイベントが終わったら、ぜひ、いっぱいお子さんを褒めてあげてください。
そして、「本番が終わったら、ケーキを買って帰ろう!」など、
ささやかな楽しみを用意しておくと、良いのではないかと思います。
もちろん、コンクールに出場することだけが、成長に必要なわけではありません。
発表会という舞台に出るだけでも、練習や心構えが普段のレッスンとは違ってきて、良い刺激になります。
当教室では、コンクールに挑戦される方はわずかです。
けれども、発表会は楽しみにしてくださる方が大半です。
昨年の発表会は残念ながらコロナウイルス感染拡大防止のため、会場が閉館してしまい、行えませんでした。
けれども、ほとんどの方が発表会出演を希望されていましたし、そのために一生懸命練習されていました。
その成果として、みなさん、少しつレベルアップされたように感じます。
人の前で演奏する機会、舞台で演奏する機会は上手に活用して、ピアノを楽しみながらレベルアップを目指してみてください。